イノベーションの風に吹かれて

Katsushi Yamashita, IBM Distinguished Engineer, Member of TEC-J - IBM Academy of Technology

テレビ最終戦争 世界のメディア界でなにが起こっているか 大原道郎(著)

「最近テレビがつまらない」で始まる、旧態依然とした放送・映像業界の凋落と終末を予見させる達観に少しの悲哀を感じる。そして、ところかまわず躍進するアメリカのデジタルプラットフォーマーであるFANGの獰猛さに脅威を感じる内容となっている。

放送、通信、映像配信のプレイヤーたちの特性と将来をキーマンの生い立ちから解き明かして、映像ビジネスを解剖する。カバーされる配信プラットフォームは地上波、衛星、通信そしてインターネットであり、映像カテゴリーもニュース、ドラマ、映画、ドキュメンタリー、スポーツと幅広い。それぞれのカテゴリーごとのビジネス規模だけでは無い空気感を表現できるのは筆者の経験のなせる技だろう。報道に携わった筆者の思いが溢れ出しているのがCBS報道の原典として紹介しているエド・マローだ。天国にいるマーローに「現場によく出て見ろ、人々の話を聞け、丹念に検証し、自分の言葉で短く伝えろ」と言わせて、今の民放のくだらない報道番組に釘を刺しているところは膝を打ってしまった。

映像のビジネスは広告と視聴料のビジネスだが、そのどちらもデジタルの影響は免れない。広告ビジネスはこれまでの営業チャネルのデジタル化を促進して広告だけではなく営業部門という大きな販売管理費を切り取ろうとしている。映画館からプライム会員費というサブスクリプションモデルはモバイルインターネットの時代に映像ビジネスの大変換をもたらしている。横並びのバラエティーばかり垂れ流す民法に将来があるとは思えないし、広告ビジネスも旧態依然とした代理店モデルではデジタル時代に生き残れない。デジタルのパワーを感じる内容に読者も日本に対するある諦観を感じるかもしれない。しかし、まだ力のあるうちに立ち上がり、デジタル世代の視聴者をデータのパワーで理解できるようになれば、放送も映像もまた輝く時代がくるかもしれないのだ。

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