イノベーションの風に吹かれて

山下技術開発事務所 (YAMASHITA Technology & Engineering Office, LLC)

3GPP 5G標準化動向について学んだこと

(5Gについて表面的にわかることは割愛していますので、あらかじめ5Gについて基礎的なことは調査してからお読みください)

5Gというのは新しい無線方式(new RAT)と従来のLTE無線を含んだハイブリッドな構成で段階的に進化することが決められている。new RATに求められているのは次の三つの性能。

(1)高速大容量

(2)超高信頼性低遅延

(3)大量IoT端末

現在の方向性としてはLTE網を維持しながら地域的にnew RATを順次導入しnew RATエリア内で高速大容量と、それに伴って副次的に実現できる低遅延を目指す。広帯域化に伴い副次的に実現される低遅延というのは伝送速度が上がると必然的に伝送時間が短くなる事を示しています。つまり輻輳時の待ち行列時間は制御できていないため、低遅延通信の保証にはならない事に注意が必要です。遠隔医療やコネクテッドカーのようにレスポンスの保証が必要な場合には遅延QoSあるいは優先帯域保証が有効です。

当初の段階では制御チャンネルもLTEを利用するので、技術的にはLTEエリアとnew RATエリアはシームレスに接続維持できる。また、多端末対応となるIoTにはLTE IoTにて対応し[Rel15 2020年]、将来的にはnew RATによる対応に拡張[Rel16 202x年]する方向。LoRAやSigfoxなどLPWAなどとLTE IoTは対抗する軸になる。日本はnew RATで高速大容量化の方向だが欧州中国などでは広帯域だけではビジネス的に成り立たないのでIoT端末(通信量は少ないが契約数が多い)サポートを急ぎたいという事情もある。Verizonの5Gネットワークは基地局間のバックホール側で利用される技術でユーザープレーンには5Gがサービスされるわけではない。

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技術的にはLTEでは20MHzだった周波数帯域は400MHzまで拡大する。電波との関係で当初(Rel15)は52GHz以下の帯域で運用を開始する。高周波帯では主としてTDD、低周波帯では主としてFDDが利用されると推察される。サブキャリア間隔を数百MHzから数GHzという低周波数帯では狭く、数十GHz帯では広く取るScalable Numerologyを採用することで帯域とサブキャリア間隔の組み合わせが増えて無線のパラメーターが10倍以上複雑化することになり、端末テストなど製品化には負担が多い。OFDM変調方式でUプレーンはWiFiと同じLDPC符号、CプレーンはPolar符号が採用される。Polar符号化は中国主導で提案ー採用され中国では大喜びだったらしい。高速化によって遅延目標(10ms→4ms)は副次的に実現できるが。周波数の利用効率をLTEの3倍以上という仕様は非常に実現が厳しい。高信頼性通信は10回以上の再送(Repitation)によって実装する方向だ。