イノベーションの風に吹かれて

山下技術開発事務所 (YAMASHITA Technology & Engineering Office, LLC)

「人工知能Botが暴言」 「WEB2.0」

人工知能Botが暴言」
技術を理解できないでバズってやがるから、暴発したとかの表層の現象の不気味さを言い募って大衆の無知を増幅して、人工知能の技術をわかったような気になってるのが嫌なんだよね。
これからいうのは、僕の空想の話だけどね。
この人工知能が認知工学(Cognitive Technology)に基づいて動作していて、資料データや論文などを解析してヒトラーが正しかったという確率が高いという結論に達したのだとしたら、その人工知能とその暴発の結果は「おいおい、これは大変だ」。(敗戦国には正義がないということに対する重み付けの問題だ、という指摘は置いといてね、架空の話なんだから)
しかし、どうも百万回「ヒトラーは正しい」と言われ続けると、事実を理解するということとは関係なく言葉のパターンとして学習してしまうということで、反射神経的なニューラルネットを用いた機械学習の問題らしい。だから、ちょっとした不適切発言フィルターとかで簡単に治るし、暴言に意味もない。とっとと普通に直せよこんなの。

WEB2.0
WEB2.0のクライアントサイドでのマッシュアップ的なアプリケーションの組み立てが、バックエンドロジックのステートレスな分解を促進していく。だから、モノリシックなアプリケーションがステートレスなサービスに分解されていく。そうするとバックエンドシステムは、小型なサービスがスケールアウトした協調分散モデルに適合しやすくなっていくのと、フロント処理とバックエンド処理の分離がきっちりと進む。だから、もはやWEBサーバーがクライアントのブラウザーに画面とか作り出してない世界になっている。そうするとセッションステートの管理とかにもキャッシュとかそういう技術がちゃんと使われだしていくので、DBへのアクセスだってずっとスケールするし、スケールするからサービスの継続性とか管理しやすくなってくる。12Factorのおっさん(おっと失礼)もそういうことがこれからのアプリケーションに大事だって言ってますな。そんな作りにしたFBやAmazonみたいなアプリケーションはグローバルに広がっているピアリングネットワーク上のCDNにキャッシュしたりしながら展開できるから、グローバルなWEBを使ったサービスが世界を席巻できてるんだろう。

なんかカタカナだらけで、意識高い系みたいでやだなこの文章。

「人工知能が金融を支配する日」

金融業務について少し調べてみたいという動機で読み始めたもののうちの一つ。金融業務のバックエンド・テクノロジーといえばフラッシュ・ボーイズみたいな超高速取引(HFT)とかリーマンショックを引き起こしたリスク評価手法のマジックくらいという認識だった私。この本も読み始めは、もはやありきたりになったフラッシュ・ボーイズをまとめたくらいの内容かな、と思ったがなかなかよくまとまっていてとても参考になった。たしかに金融市場では大量なデータを高速に斬新な手法で解析しているテクノロジー集団には人間の経験と勘はあまり通用しなくなっていくのだろうな、とタイトルにも納得。
フラッシュ・ボーイズのような超高速なアルゴリズム取引は裁定取引と言われる市場の裏をかいた取引形態で超高速後出しジャンケンをやっている、胡散臭さ満載なので漸く規制対象となるようだ。次い紹介されるのは「ルネサンス」が実施している数理的なパターン認識を活用したもので、暗号化アルゴリズム音声認識の技術を使って市場のミクロな動きを予想するというものでIBMからは音声認識技術の研究者が転職したらしい。IBMからの転職でマーケットをあっと言わせたのが「ブリッジウォーター」。転職したのはIBM Watsonプロジェクトのフェルッチ氏だ。Cognitive技術を用いてピュア・アルファという動向を見つけるという。金融市場では市場変動並みの動きをすることをベータといい低リスク投資の市場を指しているが、市場変動を大きく超えて市場平均を上回る利益(損失)をもたらす動きのことをアルファというらしい。フェルッチ氏はIBMで開発したCognitive技術を利用して確実にピュアアルファの動きをつかもうとしているらしい。反対にスマート・ベータという解析技術も開発されていて平均的な市場ポートフォリオに対する小型株やバリュー株などのアノーマリーを検知する3ファクターモデルなどが利用されている。「ツー・シグマ」にはGoogleニューラルネットを開発していたアルフレッド・スペクター氏が参加し市場データを深層学習してモデルを構築して超高速取引市場での優位性を証明している。ここまで紹介したのは市場の数日から数週間のミクロな動きを予想する技術だが、対して「リベリオン・リサーチ」は金融技術を数年にわたる長期予想に役立てようとしているということだ。
金融業務のバックエンドにおける技術利用だけではなく、投資相談などの業務に人工知能を利用して広く個人投資家に市場参加してもらおうというのが「ウェルス・フロント」のロボ・アドバイザーだ。個人投資家の個人的な行動や性格を理解して顧客特性情報を利用したプロファイリングによってアドバイスの方針を決めている。また、これまでのリスク評価で利用されてきたZスコアやマートンモデルは大手企業を評価するための手法だったが、大量データを解析できるビッグデータ技術はリテール市場におけるリスク評価(信用評価)を可能にし、クレジット与信のスマート化やピア・ツー・ピア・レンディングなどに活用できるとしている。
後半はCognitive技術やニューラルネット技術による深層学習などの一般的な技術解説なので、ご存知の方は読み飛ばしてもいいと思います。
著者は櫻井豊(RPテック取締役)金融業務に活用される数理技術を熟知した実務家だそうです。Worth to read.
https://www.amazon.co.jp/dp/4492581081

自動車の社会的負担

トランプ政権に目の敵にされてる日本の自動車メーカー擁護したい日本人魂はわかるけど。

「売れる車作って持ってこい、ドイツ車は売れてるぞ」というのもまあそうだけど。日本の軽自動車の税制優遇は、税制だけではなく衝突安全性などの安全基準についてもまったく不公平と言わざるをえない。元来軽自動車の税制は産業振興・小規模事業者支援という面があったが、スズキアルト以来の軽乗用車の普及は日本の車産業の発展を妨げているし、自動車の社会的負担を果たしていない。
トラックみたいなワゴンしか作れなかったスウェーデンの会社が高級車セグメントに移行できたのだから、米国メーカーも頑張って欲しいと思う一方で、日本は危険な軽自動車の税優遇を廃止して米国同様EVやFCVを優遇をすべき時期にきているのではないかとおもう。

 

完全な自動運転車が安全に走行できるまで技術開発が進むのを待ったり、安全な技術だけを適用していくロードマップを描いたりするよりも、多少不完全なまま社会に投入して社会の方が適応したほうがイノベーションが起こりやすいのではないか?と思わされる。専用走行レーンとか信号制御とか、不完全な技術を受け入れるための仕組みを考えているうちに社会の受容性が高まっていくのはどうだろう。

 

軽自動車の安全基準は乗用車と同じだという人がいるが、まず合格基準はまったく意味がないくらい低く設定されていて、実質的には安全基準はスコア点数評価になっている。だってロータス7みたいな車だって安全基準は満たしてるんだぜ?スコアで言ったら乗用車と軽乗用車の差は明らかだ。そのうえ衝突安全性だって、追突試験は「自車重量と同じ車」の追突試験してるんだよ?軽自動車には軽自動車しかぶつからないって。不公平だよ、やっぱり。

「シン・ゴジラ」と「Poke Go」

ブロックチェーンって言うと、ビットコインで胡散臭い とか
フィンテックって言うと、スマホでインバンでしょ とか
IoTっていうと、センサーつけときゃいいでしょ とか
Industrie4.0っていうと、かんばん方式のオープン化でしょ とか
クラウドっていうと、仮想化で安いんでしょ とか
AIっていうと、どっかのボットが暴言吐いた とか
モノとサービスっていうと、すぐにiTunes とか
DevOpsっていうと、普通にAgileの話はじめる とか
マイクロサービスっていうと、APIの話しないでSOA とか
コンテナっていうと、今のWindowsサーバー移行する とか

やめて

こういうのデジャブって言うんだよね。「ああ、これ前見たことある」とか「これって、+++だよね」とかわかったこと言って本質を理解しないで足を止めちゃう。

シン・ゴジラ」と「Poke Go」ってそういうデジャブを好奇心で押し切れたかどうかって言う意味で感性の感度を試されたんだよな。

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生と死、善と悪、自由と統治

生と死は、対立する概念ではなく、むしろ連続したものへと変わっていく。7割生きていて、3割死んでいる。そんな未来の人間の姿をデザイン・シンカー、池田純一氏が描き出す記事。そうして、カーツワイルのポストヒューマンで語られているのはブレインアップロードの可能性だ。脳から直接の制御を受け付けることのできる義手や義足、フィードバックの仕組みも研究が進むとそのデジタルインターフェースは義手と義足が身体とのコンタクトを持っていない、リモート接続もあるだろう。さらに義手や義足というデバイスだけではなく記憶装置だって脳との直接のインターフェースが取られるのであれば、外部記憶と外部記憶への記憶のアップロードだってありうるのだ。

松田卓也氏が解説するのは、意識という存在。

チューリング・テストに異議を唱えたのが、哲学者のジョン・サールです。サールは、人工知能は意識をもつことはできない、ということを証明したかったのです。これに対して、カーツワイルはこう反論します。自分の脳細胞は、シナプスニューロンも英語なんてわかっていない。けれども、わたしは英語の質問がきたら英語で返せる。君はわたしが英語を理解し、かつ意識があると思うだろう?と。あなたに意識があるとわたしが判断するのは、わたしが質問してそれに対してあなたがもっともらしい答えを返してくるからです。つまり、意識とは入力と出力を変換する「応答関数」にすぎないと、わたしは思います。

http://wired.jp/2014/12/30/life-and-death-vol14/

http://wired.jp/special/transcendence/

 

善と悪、自由と統治などは二元的に捉えてはいけない、相互に依存すると。つまり善が円の中心にあって、善なのか悪なのかと評価する単視眼的な位置付けではなくて善と悪の二つの焦点を持った楕円の構造なのだと。そういった議論から合理的な科学技術と人文社会のリベラルアーツも同様に楕円形の構造であるのだと。すぐに役立つものはすぐに役に立たなくなると、今の大学改革を憂いておられる。
いろいろ考えて、納得。

猪木 武徳(いのきたけのり) Takenori Inoki
経済学者

1945年、滋賀県生まれ。経済学者。大阪大学名誉教授。元日本経済学会会長。京都大学経済学部卒業、マサチューセッツ工科大学大学院修了。大阪大学経済学部教授、国際日本文化研究センター所長、青山学院大学特任教授等を歴任。主な著書に、『経済思想』『自由と秩序』『戦後世界経済史』『経済学に何ができるか』など

http://toyokeizai.net/articles/-/132275 

 

限界費用ゼロ社会 モノのインターネットと共有型経済の台頭


競争的な市場主義によって極限まで生産性を上げてきた結果、生産に関わる限界費用がゼロに近づく社会において資源やサービスを共有する経済モデルへの移行が必要だという論。産業革命以来の資本主義の歴史をひもときながら、資本に対する生産の従属、垂直統合された自然な独占が限界費用がゼロに近づくことで瓦解し立ち行かなくなることを指摘する。MOOCのように無償化する高等教育、生産と物流に大きな変化をもたらす3Dプリンターによるインフォファクチャリング、マイクロ発電所と送電網の構築など新しい協働型の社会インフラはすでに羽ばたき始めている。分散、協働、水平展開型のピアツーピアネットワークによる、通信とエネルギーと物流の三つのインターネットによって構成されるIoTネットワークが協働型の共有型経済を推し進めていくという。所有からアクセスへの変革を唱え、あらゆる生物圏に共感を広げると主張している。
フリーソフト活動家のリチャード・ストールマンによる「フリーというのは無料のビールというような意味ではなくて、表現の自由という意味のフリーだ。」なんていう懐かしいのも登場する。再生可能エネルギーによるマイクロ発電所をIoTネットワークで自律分散制御するということが共有型経済社会の構築のキーとなると言っている主張は、エネルギー政策を解放するという意味で、私がよく言ってる電力アナーキズムと同じで大いに賛同したい。


限界費用ゼロ社会 モノのインターネットと共有型経済の台頭
The ZERO Marginal Cost Society - The Internet of Things and the Rise of the Sharing Economy
市場資本主義から協働型コモンズへの一大パラダイムシフト

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2045年アンケート

(Q1)2045年に向け想像しにくいが最もインパクトのある変化は何だと思いますか?
あらゆるものがデジタルによって制御されている環境。人間の認知限界を超えた情報処理能力を前にして人類はどう発展するか?かつて人類は移動速度や情報伝達という世界で人間能力を超えた発明を手中に発展して来たが、認知(Cognitive)という領域でもその能力を人間能力を拡大(Augment)して手中に納めることができるだろうか。

(Q2)Q1の状態に至る間に、どのようなことが起きていくと思いますか?
かつてない高精細なデジタル情報が実社会を超えた現実を創り出すことができるようになる。4Kや8Kの情報量は人間には認識できないくらい小さな画像から対象物(人)を認識できる情報処理を可能にする。現在起こっているサイバーワールドのデジタルによる需要の生成・把握・管理・予測というような高度なマーケティングを基にした情報が実社会の生産や流通という社会活動を制御するような社会に発展している。さらに情報ビットの値が0と1しかない現在ですら情報処理は人類の認知限界を超えているが、量子ビットによる多値コンピューターや人間の脳と同じ回路を有するシナプス回路などがさらなる情報処理の高度化を進めていくと考える。
しかし、効率化や生産性を向上させるという一直線一方向への情報投資はモノやサービスの生産コストを限界まで引き下げるためにある一定の平衡点があるだろうと思う。限界費用がゼロに近くなった時に、資本主義はどう変化するべきなのか、ジェレミーリフキンの言うようにシェアリングエコノミーになるのかどうかは議論がある。Uberは(タクシーをスマホで予約できるという機能というようなチンケなものではなく)乗り手と貸し手の信用評価というようないままでにない情報を生み出してプラットフォームを拡大してきた。実社会のマーケット(お金の流通量)から得られる利得よりもプラットフォームを握ることで得られる情報の流通量の利得と評価を目指していることに気づくべきだ。

(Q3)次世代に社会を渡していくために、取り組むべきことは何だと思いますか?
目に見えないことを理解する力をつけること。しかし現代日本では「日本には科学を論じないしきたりがある」と物理学者の山口栄一氏は言う。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140819/371343/?n_cid=nbptec_tecml&rt=nocnt
科学や技術について知見を持たずにあらゆることが判断されている社会に警鐘を鳴らしたい。現在起こっていることを理解するためには最低限の技術的な素養がすでに必要で、それを有している人は限られている。経済産業省産業構造審議会でYahooの安宅和人氏「シン・ニホン AI ×データ時代における日本の再生と人材育成」には取り組むべき課題とスタートポイントが描かれている。http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shin_sangyoukouzou/pdf/013_06_00.pdf
STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)+Materialが重要な領域になると思う。

(Q4)30年後のあなたは、2017年のあなたに何を伝えたいと思うと思いますか?
「じゃまオジ*」にならずLeadership that mattersになりなさい。
(じゃまオジ=安宅さん資料P.30)