イノベーションの風に吹かれて

山下技術開発事務所 (YAMASHITA Technology & Engineering Office, LLC)

限界費用ゼロ社会 モノのインターネットと共有型経済の台頭


競争的な市場主義によって極限まで生産性を上げてきた結果、生産に関わる限界費用がゼロに近づく社会において資源やサービスを共有する経済モデルへの移行が必要だという論。産業革命以来の資本主義の歴史をひもときながら、資本に対する生産の従属、垂直統合された自然な独占が限界費用がゼロに近づくことで瓦解し立ち行かなくなることを指摘する。MOOCのように無償化する高等教育、生産と物流に大きな変化をもたらす3Dプリンターによるインフォファクチャリング、マイクロ発電所と送電網の構築など新しい協働型の社会インフラはすでに羽ばたき始めている。分散、協働、水平展開型のピアツーピアネットワークによる、通信とエネルギーと物流の三つのインターネットによって構成されるIoTネットワークが協働型の共有型経済を推し進めていくという。所有からアクセスへの変革を唱え、あらゆる生物圏に共感を広げると主張している。
フリーソフト活動家のリチャード・ストールマンによる「フリーというのは無料のビールというような意味ではなくて、表現の自由という意味のフリーだ。」なんていう懐かしいのも登場する。再生可能エネルギーによるマイクロ発電所をIoTネットワークで自律分散制御するということが共有型経済社会の構築のキーとなると言っている主張は、エネルギー政策を解放するという意味で、私がよく言ってる電力アナーキズムと同じで大いに賛同したい。


限界費用ゼロ社会 モノのインターネットと共有型経済の台頭
The ZERO Marginal Cost Society - The Internet of Things and the Rise of the Sharing Economy
市場資本主義から協働型コモンズへの一大パラダイムシフト

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2045年アンケート

(Q1)2045年に向け想像しにくいが最もインパクトのある変化は何だと思いますか?
あらゆるものがデジタルによって制御されている環境。人間の認知限界を超えた情報処理能力を前にして人類はどう発展するか?かつて人類は移動速度や情報伝達という世界で人間能力を超えた発明を手中に発展して来たが、認知(Cognitive)という領域でもその能力を人間能力を拡大(Augment)して手中に納めることができるだろうか。

(Q2)Q1の状態に至る間に、どのようなことが起きていくと思いますか?
かつてない高精細なデジタル情報が実社会を超えた現実を創り出すことができるようになる。4Kや8Kの情報量は人間には認識できないくらい小さな画像から対象物(人)を認識できる情報処理を可能にする。現在起こっているサイバーワールドのデジタルによる需要の生成・把握・管理・予測というような高度なマーケティングを基にした情報が実社会の生産や流通という社会活動を制御するような社会に発展している。さらに情報ビットの値が0と1しかない現在ですら情報処理は人類の認知限界を超えているが、量子ビットによる多値コンピューターや人間の脳と同じ回路を有するシナプス回路などがさらなる情報処理の高度化を進めていくと考える。
しかし、効率化や生産性を向上させるという一直線一方向への情報投資はモノやサービスの生産コストを限界まで引き下げるためにある一定の平衡点があるだろうと思う。限界費用がゼロに近くなった時に、資本主義はどう変化するべきなのか、ジェレミーリフキンの言うようにシェアリングエコノミーになるのかどうかは議論がある。Uberは(タクシーをスマホで予約できるという機能というようなチンケなものではなく)乗り手と貸し手の信用評価というようないままでにない情報を生み出してプラットフォームを拡大してきた。実社会のマーケット(お金の流通量)から得られる利得よりもプラットフォームを握ることで得られる情報の流通量の利得と評価を目指していることに気づくべきだ。

(Q3)次世代に社会を渡していくために、取り組むべきことは何だと思いますか?
目に見えないことを理解する力をつけること。しかし現代日本では「日本には科学を論じないしきたりがある」と物理学者の山口栄一氏は言う。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140819/371343/?n_cid=nbptec_tecml&rt=nocnt
科学や技術について知見を持たずにあらゆることが判断されている社会に警鐘を鳴らしたい。現在起こっていることを理解するためには最低限の技術的な素養がすでに必要で、それを有している人は限られている。経済産業省産業構造審議会でYahooの安宅和人氏「シン・ニホン AI ×データ時代における日本の再生と人材育成」には取り組むべき課題とスタートポイントが描かれている。http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shin_sangyoukouzou/pdf/013_06_00.pdf
STEM(Science, Technology, Engineering, Mathematics)+Materialが重要な領域になると思う。

(Q4)30年後のあなたは、2017年のあなたに何を伝えたいと思うと思いますか?
「じゃまオジ*」にならずLeadership that mattersになりなさい。
(じゃまオジ=安宅さん資料P.30)

横断歩道の赤信号

「今年はスキー場の事故が多いですね」と言われて、「スキー場じゃなくて、近くの雪山ですね」とお返ししておいた。スキー場管理してる人がかわいそうだもの。

スキー場内でもバッキャンやボーダーは規制線を超えてリフト下など未整備の場所にどんどん入り込んできていて、安全が脅かされていると感じて不愉快です。どうして規制線外のエリアを安全だと思うのでしょうか?雪崩や接触、衝突などプロのスキーパトロールでも難しい危険予測なのに素人がどうして自己責任とかで判断するんでしょう。自己責任が「自分さえ安全なら」だったり「自分の安全は自分で守るから」だったりと、多くは誤解しています。自損事故の衝突は勝手にしろかもしれないですが、リフト搭乗者との接触だったり、雪崩の発生とかをどう予測するのでしょう。規制線はルールであって、ルールを破ることは自己責任とは言いません。ルールが破られて安全が確保できないと規制が強化されます。規制線を金網にしたり、装備不問で全面立ち入り禁止とか、ヘルメット義務化など息苦しいです。


ルールは

  1. ルールだから守る。
  2. ルールを守らなかった時に発生する影響に自分の責任範囲外のものがあるから、守る。
  3. ルールを守ることで自己責任活動範囲を確保でき、その不自由さが行動の自由を保証するから守る。

と言う風に考えます。

だから、だれも居なくても横断歩道の赤信号を愚直に守るという行動を続けます。赤信号を渡るというささいな行動が社会のルールとモラルと人々の安全の判断をゆっくりと崩壊させていくことに私は責任取れないので。

田舎に住みますか、都会に住みますか

都会に住みますか、田舎に住みますか

あるプロジェクトの意思決定において。「クラウドへの移行を費用視点で詳細に分析した結果、今までのサーバーと同じ性能容量を確保する場合、クラウドに移行するよりも中古機を買って運用した方が安いので、クラウドへの移行は致しません。」と言われ反論する気が無くなった。新しい取組みに反対する人はいつもコストでしか反論しない、本心はやりたくないから規定通り工夫もなくコストを積んでるだけなのに。新しいテクノロジーがもたらしてくれる価値の増分には目を向けず、これまでと同じことを安くできることしか考えないという姿勢を崩さない。進歩が止まる瞬間だ。

こういうのって移動の基本が公共交通機関の都会に住むか、一時間に数本のバスも運行できないような中古の軽自動車だらけの田舎に住むかの判断だ。都会に住むのは共有のサービスが充実していて、自分で持ってなくてもサービスを買うことで便利な生活をしたいからだ。単位距離あたりの移動コストの比較じゃない、ライフスタイルの問題だ。ダウンタウンに出かけて飲んで電車で帰りたいから都会に住むんだよ、田舎にしか住んだことの無い人にはわからないよ。ICカードでさっと電車に乗り、利便性のためにみんなでコストを負担して電車やバスをシェアする。それに大規模な工場の引き込み線でもない限り電車に乗りたいからって言って電車作る人も居ないでしょ。

もういい加減にコスト比較しかできない能力の人にIT投資判断させるのやめよう。

Service Level Agreementとか

可用性なんてサービスの品質を向上させる上であまり役に立たない。契約、約款におけるSLAはサービス提供時間に対する保証契約の時間割合を示していることを正しく理解したい。サービスの見える化やサイドレターの撲滅には役立つがシステムの信頼性設計は別の対処が必要だと思う。

 

 

単体のハードウェアの信頼性でサービスの可用性を論じちゃいけないけど、可用性が契約した時間に対するサービスされている時間の割合であってシステムが故障しない確率じゃないということを説明するために、単純な例を一つ。MTBF平均故障間隔)35年の化け物みたいなマシンがあってMTTR平均修理時間)を8時間としたら可用性は99.997%です。満足ですか?このマシンを5年運用したときに故障する故障率はどのくらいかというと、だいたい15%です(詳細は信頼性計算とかの基礎的な算数をググってみてね)もちろん0.003%なんかじゃありません。導入した翌日に15%の確率で8時間停止するマシンの可用性は99.997%です。SLAで99.99%を求めてもこけるときはこけるんです。

それよりサービスプロバイダーの情報公開に基づいてして即時に対応できるFailure Based Designを徹底するほうがいいと思うんです。「サービスプロバイダーなんだからSLA99.99%でやってよ」って言っていても落ちるときには落ちる。それより責任ある情報公開に基づいて、自ら自信の持てる運用を作るほうが「自分の責任で努力できて」いいんじゃないの?
それにどんなにシステムが障害起こしてもサービスが止まらないような運用設計してたらさ、SLA高くて単価の高いインスタンスなんてナンセンスなんだよね。止まったら即座に他で動かす様にしたらいい。

フロントエンドのアプリケーションとバックエンドの障害を切り分けて、動くところを探して運用できるステートレスなアプリケーションデザインを採用したり、ダッシュボードとモニタリングの絶え間ない改善とか、サービスプロバイダーのSLA交渉とかしてる前にやること一杯あるでしょ。